[未知なもの] No.38 静かな夏 2011 年 8 月 19 日 金曜日

静かな夏

静かな夏の

虫の羽ばたき
苔の吐息
鉱物の囁き

焼ける土
草の喘ぎ
水の気配
遠い砂

身体の中で
音が鳴る

ことばが身体を脱け出してゆく

貝殻を拾って
それらが風に羽ばたいていた
静かに風に鳴っていた

その潮騒を
手のひら一杯にまぶして
おにぎりを握ろう

なかに小さな
星粒をいれてね

ここには
いつも風が吹いている

風が身体をすり抜けてゆく


[未知なもの] No.37 Rの朝 2010 年 12 月 7 日 火曜日

蝿が飛ぶ
美しい夜

愛撫しすぎて
壊れてしまった文字を

その人は

懐かしい紙に
包んで捨てた

眩しい

朝の光のなかに

鉛筆の
黄色い削り屑が
積った


[未知なもの] No.36 この秋 2010 年 12 月 7 日 火曜日

11月のまっすぐな道を
しばらく歩いて
考えたけれど

ビスコがビスコである時は
永遠のようでいて
短い

ビスコがビスコであるうちに
食べよう

跳ねる人
 跳ねる人
跳ねる人

ところで

枕が枕であるときは
知っているようで
夢の中だ

夢の中で
ビスコを枕に
小さな私が眠る

眠っているのは
砂の丘

砂の丘で
ビスコを枕に
小さな私は夢を見る

小さな私は
ふるえるように
ビスコの夢を見る

眠っているのは
夢の中

跳ねる人
 跳ねる人
跳ねる人

この秋の

ふるえるような秋の道を
しばらく歩いて
考えたけれど

ビスコがビスコである時は
永遠のようでいて
短い

さあ
私が私であるうちに

食べよう

ビスコ


[未知なもの] No.35 葱の秋 2010 年 10 月 27 日 水曜日

葱を重ねる

意味もなく
葱を

一つ、二つ
二つ、三つ

重なる白の
緑が濃く
深くなりゆく

葱の秋


[未知なもの] No.34 うたは旅人 2010 年 10 月 27 日 水曜日

しらない街で
一本の大きな木が
私の訪問を待っている

そう想うだけで
胸は躍る

うたは旅人

心から心へと
翔けてゆく
小さな翼


[未知なもの] No.33 そのとき 2010 年 7 月 9 日 金曜日

そのとき、(なぜだろう?)
扉はあいていた

風景は
沈んでは
かすれていった

公園の
小さな空で

掛け軸を水に浮かべて
流れ出してゆく墨を

ただ眺めて

長椅子のように

まっすぐに
膨らんでゆく
パンを

食べて

ぼくらはボールのような形をして
止まっていた。

あるいは、

虹をよむ人も
このどしゃぶりで
もうどこかへ行ってしまったのだろうか?


[未知なもの] No.32 聖夜 2010 年 7 月 9 日 金曜日

真夜中に ピアノ線
はりつめた 糸電話
時ふかい 地層から
懐かしく 響く声

しらぬ しらぬ…

窓の外 消えていた
街灯が 点る

家のなかでは
今日という日が
洗面台の湖で
ボートを漕いでいる

帰ろう
知らない街へ

破れた靴下を
ごみ箱のなかからほりだして


[未知なもの] No.31 富良野 2009 年 10 月 29 日 木曜日

落ちばにうつぶせ

動物になる


[未知なもの] No.30 葱を刻む 2009 年 10 月 23 日 金曜日

葱を刻む
葱を

ただひたすら
葱を

時が刻まれ
時が

葱を刻む
葱を

葱が刻む
時を

ただひたすら
時を

時が刻む
葱を

ただひたすら
葱を

葱が
時を

ただひたすら
葱を

葱を刻む
葱を

ただひたすら
葱を

 
さあ、もう秋だ
そろそろあいつが
葱を背負ってやってくる


[未知なもの] No.29 川面 2009 年 10 月 2 日 金曜日

くる、水面
くる、くる、川面

 

鳥のこえが落ちてくる

 

くる、くる、うねる、つぶやく、ひかる

風の色、川面

 

そら、
忘れていた

 

はねる魚

 

動かない

 

川面
くる、くる、水面

 

どこからか
子供の声も、ほら

くる、くる、くる

 

くる、くる

雲きれ

 

ゆれる、ふるえる、またたく、ひかり

 

くる、くる、水面
くる、くる、川面

 

道がおいで、といっている



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