硬い鉛筆で
ちぢれた紙に書き付けながら
(十勝 石狩 信濃 北上…)
少女の頭に
次々とひろがってゆく平野
夕どきの混雑した電車のなか
硬い鉛筆で
ちぢれた紙に書き付けながら
私たちには
夢中になれる
真白な地図がない
(十勝 石狩 信濃 北上…)
電車は川を越える
次の駅で
私たちは各駅停車に乗り換えた
いつもの駅で、
私は降りることができなかった。
ほかに行くあてがあるわけではない。
ただ、降りることができなかったのだ。
「アザミの花とつきぬける大空」。
(もういっぺん、いってみろ…)
私たちには神話が、
物語が必要なのだ。
良質の虚構が。
現実の背後に無限にひろがる、想像力の海へ、僕らはなぜ向かおうとしないのか?
(もういっぺん、いってみろ…)
終点で降りる。
そこで待っているものはなにもない。
しずかに忘れ去られてゆくものが
永い時のトンネルをぬけて
あたらしく生まれることがある
ジャカルタ行きの飛行機のうえで
わたしはそんなことをかんがえていた
ひろがってゆくからだ
ぶちぶちの
くらげのように
わたしは知らないのかもしれない
わたしはいない
あなたがいて
わたしのいない世界だけが
どこまでもあかるく
つづいてゆくということを
塩
結晶
なとら なとり
小豆 あずけた あげまんじゅ
塩
大福
小学校
かつら かついで 初鰹
こんど またこんど
といって またこんど
美味美味
まんじゅしゃげ
そうれ、
そうしてあんたは羽根を打つ
塩
おく しお
通りを歩いていたら
道ばたに生姜が落ちていた。
この街はわたしらに、
どんな鍋を
ふるまおうというのか。
首筋をこがらしがふきぬける
もう秋だ…